誰かを連れていく時の
ラーメン作法

ラーメン店にはいる前のお祓い
 
 誰かと一緒に行くときは、前回書いたようにラーメン店にはいる前に一種のお祓いともいうべき大切な作法がある。そのお祓いとは、

<他人事のような控えめな推薦>

である。

 まず、おすすめの店を言い出すときに
「○○という店があるんだけど、知ってる?この店はこの前、TVで紹介されていたんだけど・・・。何回か行ったことがあるけども、○○軒(まずいことで定評のある店)よりはおいしかったよ。」
と控えめに説得することが大切である。

決して
「○○のラーメンは、おいしいよ。味は保証するから。」
などと大見得を切ってはいけない。

 

 なぜならば、味を保証した時点で、推薦したラーメン店と自分の立場がタレントとマネージャーの関係(と勝手に思いこむだけだが)になってしまうからだ。連れていく相手はさしずめ、レコード会社のスカウト担当であろうか。


 今まで相手とどのような人間関係であっても、この時点での相手の精神的優位は明らかである。

どのような評価を相手が下すのかわからないので、様々な手を使って気に入らなかった場合の伏線をたっぷりと張る必要がある。

 

ラーメン店に入ってからの
ありそうな会話
 「この店は、おいしいんだよ。絶対おすすめ。」
「おっ、じゃあ行ってみようか。」
と、同僚を誘ってラーメン店に行く。

このとき、遠ければ遠いほど、期待は高まる。しかし、同僚の口に合わなかったことを考えると期待が大きくなるだけに落胆の色は激しくなるので気をつけなければならない。


「このラーメン店なんだ。構えはおいしくなさそうなんだけど・・・」
などと、へこへこした態度が大切である。

 ラーメン店の中では、不愛想なおじさんがじろっとこちらをにらむ。客は誰もいない。
 「ラーメン二つ。」
「あの親父は、不愛想なので有名なんだ。だいたい頑固な親父の店っておいしいところ多いじゃない。」
と言い訳がましくなるのはしかたがない。

 でてきたラーメンは、どうやらお気に召さないらしい。
「豚骨ラーメンは、日にちと時間でバランスが微妙に違うんだよね。今日は、あまりいい日じゃないねえ。」
とか
「ここねぇ、有名になってから味が落ちてんだよね。2年前はもっと・・・。」
などとうんちくをたれながらいいわけをしてもよいかもしれない。
 

 自分がおいしくいただいていても、相手の顔色をうかがいながら、
「今日のチャーシューは、うまくできてないねえ。」「スープをとる時間が少ないみたいだねえ。」
など、へりくだることが肝要である。

 

 「おいしいだろう。ここのは日本で一番おいしいんだよ。」
など、決して言ってはいけない。なぜならば、ラーメンは人により、好みの違いが激しいので、後で、なんと言われるか分からない。自分が会社などで元々弱い・または同等の立場の時には、はっきりとした評価をしてくれるから気が楽である。

しかし、自分が相手の上司や先輩ならばならば、
「あー、おいしかったです。ケバサさんさすがにラーメン通ですねえ。」
などと言いながら、陰で、
「あいつは、すごい味音痴だぜ。」
といわれるのがおちである。

 
 このように、相手に精神的イニシアティブをとられないためにも、単なる評論家の立場で推薦することが望ましい。

ここまで気遣いをするぐらいならば一人でいった方がいいではないか、と思われるかもしれない。




そのとおり!!
ラーメンは一人で食べるものなのである。